福岡地方裁判所 昭和41年(わ)502号 判決
右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官細川顕出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告株式会社平和会館を罰金八〇〇万円に、被告人岩崎一郎を懲役八月にそれぞれ処する。
但し、被告人岩崎一郎に対しては、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用中証人藤井国義、同趙延璋に支給した分を除くその余の分は被告人らの負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告株式会社平和会館は福岡市中央区天神二丁目六番四一号に本店を設け、遊戯パチンコ店を経営するもの、被告人岩崎一郎は右会社の代表取締役会長としてその営業全般を統轄しているものであるが、同被告人は被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、右パチンコ営業関係から生ずる収益の一部を除外し、これを西日本相互銀行本店に設けた架空人名義である前田司他一三名義の定期預金、同木下隆一他二名義の普通預金の各口座にに入金して隠し預金とする一方、その余の収益だけをもつて恰も真正な全収益のように記載した公表帳簿補助簿等を作成するなどの不正な方法により、昭和三七年一一月二日から同三八年一〇月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得は別紙貸借対照表記載のとおり金八六、五三万二、一六七円であつて、これに対する正当なる法人税額が金三二、四三万四、六一〇円であつたのにかかわらず、昭和三八年一二月二八日所轄福岡税務署長に対し、右事業年度の所得金額は金二四、三九万七、四四一円であつて、これに対する法人税額が金八、八二万五、一九〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて前記正当なる法人税額との差額金二三、六〇万九、四二〇円をほ脱したものである。
(証拠の標目)
一 福岡法務局登記官内海一作成の平和会館登記事項証明書
一 第二七回公判調書中の被告株式会社平和会館代表者兼被告人岩崎一郎の供述部分及び同人の当公判廷における供述
一 被告人岩崎一郎の検察官に対する供述調書三通
一 大蔵事務官作成の被告人岩崎一郎に対する質問てん末書五通
一 収税官吏福島安成作成の告発書
一 第一二、一三、二一、二二回公判調書中の証人福島安成の各供述部分及び同人の当公判廷における供述
一 大西高市作成の脱税額計算と題する書面並びに福島安成他二名作成の脱税額計算書説明資料と題する書面
一 第五回公判調書中の証人山田久子の供述部分及び同人の検察官に対する供述調書
一 第四回公判調書中の証人横手春吉の供述部分及び同人の検察官に対する供述調書二通
一 第七回公判調書中の証人横手梅子の供述部分
一 第一五、一六、一七、二〇回公判調書中の証人八山博の各供述部分及び同人に対する当裁判所の尋問調書
一 田辺弘一の検察官に対する供述調書
一 第六回公判調書中の証人田中昭也の供述部分及び同人の検察官に対する供述調書(同人作成の添付メモを含む)
一 田中昭也作成の昭和四〇年八月九日付証明書三通
一 第一〇回公判調書中の証人岩崎キミの供述部分
一 第一〇回公判調書中の証人菅川弘貞の供述部分
一 大蔵事務官作成の佐渡島匡男に対する質問てん末書
一 押収してある空台帳三冊(昭和四五年押第一九五号の九、三六、三七)、昭和三八年出血メモ一枚(同号の四四)、確定申告書一冊(同号の四七)、印章三四個(同号の四八、五五)、総勘定元帳一冊(同号の二七)、金銭出納帳一冊(同号の二八)、銀行勘定帳一冊(同号の二九)、荒利益率算出表一冊(同号の三三)、権利証書一八綴(同号の三八乃至四三)。
(弁護人の主張に対する判断)
弁護人は、被告人において本件法人税をほ脱した事業年度終了の翌日である昭和三八年一一月一日から始まる次年度の法人税確定申告を昭和三九年一月四日になすに際し、右ほ脱年度の未申告収益金三四五〇万円を次年度における雑収入として自発的に申告しているのであるから、被告人は本件法人税ほ脱についての犯意を欠き、然らずとするも公序良俗に反せず罰するに足る違法性を欠く旨主張する。
然しながら、被告人に法人税ほ脱についての犯意があつたことは、判示認定のように計画的な隠し預金をした上、これを除外した残余収益金を真正な全収益金とする諸帳簿を作成していた事実等に鑑みて優にこれを肯認することができるし、脱税犯は詐偽その他不正の行為により虚偽の確定申告をし、その納期が到来したときに成立完了するのであるから、右弁護人主張の如く期限後にそのほ脱分に相当する追加納税申告を自発的にしたものであるとしても、既に完了した法人税ほ脱行為の違法性には何ら影響を及ぼさないので、弁護人の右主張は採用しない。
(法令の適用)
被告人岩崎一郎の判示所為は法人税法四八条一項(昭和四〇年法律三四号による改正前のもの)に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期の範囲内で被告人岩崎一郎を懲役八月に処し、被告会社に対しては同法五一条一項四八条一、二項(いずれも昭和四〇年法律三四号による改正前のもの)を適用して罰金八〇〇万円に処し、被告人岩崎一郎に対しては情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予すべく、訴訟費用のうち証人藤井国義、同趙廷璋に支給した分を除くその余の分は刑事訴訟法一八一条一項により被告人らに負担させることとする。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小川冝夫 裁判官 池田憲義 裁判官 清田嘉一)
貸借対照表 昭和38年10月31日現在
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